Complete text -- "出張の合間に:東北編(2012年9月)その11"

07 October

出張の合間に:東北編(2012年9月)その11

防波堤の上に座って海を眺めていると,背中の先の景色が嘘のように思えてきます。
都会の喧噪もなく,心地よい波の音が静かに響く海。

暫く海を眺めた後,日和大橋を渡ってみたくなり,防波堤を降りて歩き始めました。
それにしても,すごい数の車の山...

うずたかくつもった車の山


橋を少し登って振り返ると,今度は左手に海,右手には,広い範囲に残された車や瓦礫が見えます。
それにしても,空が奇麗です。

日和大橋から見た瓦礫


日和公園からも見えた瓦礫の山を海側から見ると,4階建てのマンションの高さにも匹敵しそうな高さになっていることが分かります。

瓦礫の山


海岸には,ネットにくるまれた重しがずらりと並んでいますが,再び津波に魘われれると,瓦礫の山が崩れてしまいそうな気もしてきます。


橋を歩いて渡っているのは自分だけ。
一台の自転車が前から通り過ぎて行きましたが,車の流れが途切れ途切れにあるだけの街。
嘗ての面影は,3.11を境に消えてしまったようです。

橋を渡り終え,国道398号線から戻ろうと歩いていると,近くには廃墟も残っているようなところにラーメン屋さんを見つけました。
営業しているようなので,入ってみることに。

地元の子供や近所の人数人がテーブル席に座っていて,僅かな数のカウンターに座り,四国で見た名前の「ぶっかけうどん」を頼んでみると,掠れた声で年配の女性の方が,何やら返事をしてくれるのですが,最初,何を言っているのか聞き取れませんでした。
そのうち,今日は作れない,ということが分かり,代わりにチャーシュー麺を注文すると,無事了解してくれた様子。

暫くすると,チャーシュー麺の前に,「良かったら野菜を...」と,ドレッシングを掛けたレタスや野菜を小皿に載せてサービスしてくれました。
見ず知らずの自分に対して,親切にして下さる余裕は,何処から来るのでしょうか。

「震災の時はどうだったんですか...?」と聞いてみると,「2m の水で一階部分は全部水に浸かった...」そうで,改装し,9/1に再開したばかりだそうです。
津波の時は,2階で命拾いしたそうですが,ご主人は「水で亡くなった」とのこと。
今は,向かいの家にお一人で住まわれているそうで,お一人でラーメン屋を再開させる決心をされた,ということが分かりました。

チャーシュー麺は,特に地元のもの,というわけではないそうですが,比較的薄味のさっぱりした醤油味で,こってりした味の多い首都圏の味に飽きていたこともあり,新鮮に感じられました。
昔ながらのチャーシュー麺は,こんな味だったのかも,と思うようなシンプルなラーメンです。

お店を出る時に,「御釣はとっといて下さい」と言って出ようとすると,「それは,ダメ!」と言って,ガンとして受け取ってくれませんでした。
優しい一方で,自立心の強さが感じられる言葉に,こちらが降参する他なく,御釣を受け取って,「頑張って下さい」と伝えて店を出ました。

ラーメン屋さん



午前中,随分と遠回りしたのですが,この御店にたどり着くための伏線だったような気がします。
復興は,傍から見る以上にずっと大変で,強い精神力がないと前に進めない,ということを,優しくも強い,年配の方から教えて頂き,石巻を歩いて本当に良かった,と思いました...


06:31:10 | dk | |
Comments

Junko Muto wrote:

なんかいい時間すごしたんだなって、文章読んでて思いました。
自分で歩いてみると、実感できること多いだろうな〜。やっぱり人は少ないんだね。
私も、やっぱり早いうちに行かないといけないな。
10/12/12 11:29:08

dk wrote:

百聞は一見に如かず,で,自分の目で見て初めて分かることは沢山ある,と,今回実感しました。

機会があれば,気仙沼等まだまだ復興が進んでいない他のところへも足を運びたいと思っています...
10/12/12 13:43:06
Add Comments
:

:

トラックバック
DISALLOWED (TrackBack)