Archive for January 2008

25 January

素戔嗚尊(すさのおのみこと)

この小説は,なんと35節もあります! 読んでいる途中「やけに詳しく描写している?」という部分もあれば,「なんか,手抜き?」という部分もある,ちょっと変わった小説です.主人公は,力持ちには違いないんですが,正確の良い部分とそうでない部分を持ち合わせていて,でも,どこか実際にいそうな人物像を思わせるような,そんな印象を持たせます.

主人公が美男子ではない点は,残念な事に自分にも共通するので,なんとなく「確かに!」とか「ん〜,分かる!」とか,色々と共感させる点もあります.芥川自身は,自分を表現しようとしているわけではないにしても,何処か,ウブな自分を重ねているようにも読めますね.

読んでいる途中,「美女と野獣の日本語版?」かと思ったりもしましたが,35節を読み終えて,「え〜,これでお終い !?」という終わり方で,納得行かない気がして次のタイトルを見ると,「老いたる素戔嗚尊」と続いているではありませんか!

芥川は,現実にありそうな話も描く一方で,小説の中で子供のように遊ぶ一面もあるなぁ,などと今更のように感じながら,彼がどんな心境でこの小説を書いたのか,知りたくなる,今日この頃です...


23:59:26 | dk | No comments |

10 January

あの頃の自分の事

このタイトルは,全集の No.2 に含まれるものですが,書き出しがちょっと面白いんです.

「以下は小説と呼ぶ種類のものではないかも知れない.そうかと云って,何と呼ぶべきかは自分もまた不案内である」

これも小説家のテクニック,と言えばそれまでかもしれませんが,実際,龍之介自身,小説らしくない小説として書く事を楽しんでいる節がある,と思っています.

テクニックは,ある程度は学ぶことが出来る類いのものもあるかも知れませんが,洞察力や記憶力は,その人の力量が示される部分でしょう.洞察力も,努力すればある程度は培うこともできそうですが,記憶力,これについては,全く自身がありません,はい.

でも,小説家になれないからと言って,小説家になることを諦める理由にはならないと思っています.この小説の最後は,こう締めくくられています.

「自分はアスファルトの往来に立ったまま,どっちへ行こうかなと考えた.」

これなら,僕にもできますから...♪


22:55:42 | dk | No comments |

09 January

僕は小説家になれない

昨日のうちに読み終えられなかった「秋」という作品を,帰りの電車の中で読み終える事ができました.そんなに長い作品ではないんですけど,眠いとサボってしまう事も多くて.

姉妹が主人公のこの作品を読み終えて,ふと,龍之介は「女性の心理をどうやって分析してきたんだろう ?」と思いました.電車を降りてからうちに戻るまでの帰り道,前を見ているような見ていないような感じで足に任せるままに歩きつつ,「女性の小説家は,どうやって男性の心理を分析するんだろう ?」「男性と女性と,異性の心理を分析するのは,どちらが得意,とか,あるんだろうか ?」等々.

自分が小説家になったら,と思う事は時々ありますが,改めて考えてみると,「女性の心理を分析するのは苦手だよなぁ...」と思えてきて,「そりゃ〜,モテないわけだ!」と,いつの間にか一人で納得してしまいました.

「ん〜,このままじゃいかん!」と思ってはいますが,「世の中に半分いる女性の心理が理解出来ないなんて,なんて情けないんだろう...!」って気がしてきます.小説家になれなくてもいいから,もっと人の気持ちが分かるようにならないといけませんね,ホント♪


00:14:00 | dk | No comments |

08 January

尾生(びせい)の信

1〜8まで並んでいた芥川龍之介全集を,何年か前にまとめて購入し,少しずつ少しずつ,読んでいます.
まだ,No.3 を読んでいるところで,全てを読み終えるには,まだまだ時間が掛かりそうですが,気になった小説を少しずつ取り上げてみたいと思います.

タイトルの「尾生の信」は,わずか4ページという短いもので,読むスピードが遅い僕ですら,通勤電車の中で読み終えることが出来る数少ない小説の一つでしょう.このわずか4ページの中に,「が,女は未だに来ない。」という一節が7回登場します.そして,女を待ちわびて亡くなってしまい,幾千年の後に魂となって今の龍之介に宿っている,という筋書き.どこかで聞いたことのあるような話だが,以前聞いた話が,この尾生の信だったのかもしれません.

短い小説,というと,中学生の時に図書館にあった本を片っ端から読んだ星新一の作品を思い出します.当時(そして今でも?)国語は好きではなく,読書も元々好きではなかった僕が,唯一と言っていいほど抵抗無く夢中になった作家.彼のショートショートがきっかけで,僕自身の HP に shortstory のコーナーを設けたくらい...

PCばかり見てないで,少しは日本の文学にも触れる時間を作りたい,と思って,今後も少しずつ,彼の作品を読んで行こうと思っています.


00:21:05 | dk | No comments |