Archive for March 2009

28 March

感想戦の面白さ

先日,王将戦七番勝負が行われ,巻き返した羽生さん(四冠)の王将戦5連覇,という結果になりました.
すごいですね,ホント.

通算では12期となりますが,1995年度に当時の谷川王将から4-0のストレートで奪取した後は6連覇.2001年度と2003年に,佐藤さんと森内さんに譲ったものの,奪取された翌年にはすぐに奪回しているあたり,相性の良さもあるように思われます.
ちなみに,一番長い王座については,1992年以来,なんと17連覇!
こんな大記録を作られてしまうと,実力差が僅差な一流棋士の中でも,真似できる人はなかなか現れません.

ちなみに,先週の日曜日に行われた NHK杯の決勝戦でも羽生さんが勝ちましたが,その際に,司会者の方が「(2008年度のNHK杯では)横歩取りが一局も無かった」と話していて,ちょっとした話題になったようでした.
そして,その数日後に行われた王将戦七番勝負で,後手を持った羽生さんが横歩取りを選択するあたり,チャレンジ精神と勝負強さを改めて印象づけたと思われます.
それにしても,今回の第七局,過去に前例がなくなった,という局面の後手(羽生さん)の指し手は,自分には全く意外に思われる手でした.
残念ながら,かなり先まで読めないと,その意味は分かりません.

感想戦で羽生さんが話していたようですが,突然思いついたわけではなく,あり得る手,として引き出しにしまってあった手の一つだったようです.
完全に同じ局面と言えなくても,似たような局面でどのような手を用意できるか,その懐の深さには,毎回驚かされます.
しかも,将棋は,勝負がついた後,両者が局面のあれこれを述べ,控え室で検討されていた手が何故悪かったか,とか,その逆に,控え室で検討された手だと,形勢が逆転していたとか,場合によってはどの手が敗着だったか,といったことまで,その場で色々なことがオープンになります.
そういった繰り返しをしつつも,常に新しい手を考え続けているところは,技術の進歩と共通するところが少なくありません.
特許も何もない将棋は,ある意味企業の競争以上に厳しいものですが,それだけに,感想戦の中身を知る事も,他の棋士や将棋ファンにとっては貴重なプラスαになります.

明後日は,佐藤棋王と久保八段により,棋王戦の第五局(最終局)が行われます.
こちらも,久保八段が2連勝の後,佐藤棋王が2連勝し,勢いは佐藤棋王の方にありそうですが,果たしてどんな勝負になるのでしょうか.
勝敗の結果は,学会から戻って知る事になりますが,できれば感想戦の中身も知りたいくらい.
数年後には,ワンセグで感想戦の動画がリアルタイムで配信されているかもしれません...


21:02:00 | dk | No comments |

18 March

好・不調は,誰にでも

棋王戦の5番勝負,佐藤棋王が4局目を制して,二勝二敗の五分に戻し,タイトルの行方は最終局に持ち越されました.

第1局と第2局は,86手,57手,と短手数で久保八段が勝利しましたが,その後の第3局と第4局は,121手,142手と,平均的な手数かやや長手数で佐藤棋王が巻き返した格好です.
短期決戦は久保八段に軍配が上がり,少し腰を落として佐藤棋王の貫禄が現れた,という感じにも思われます.

今年の勝率で比較すると,久保八段の方が優っていますが,渡辺竜王と羽生名人が争った竜王戦の時と同様,角番からの大逆転,という可能性も出てきました.

どんなに強い棋士でも,全ての勝負に勝ち続けることはできませんし,波もあるでしょう.
最終局,佐藤棋王は負ければ無冠になり,久保八段はタイトルを獲得することになりますが,果たして勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか...


20:26:06 | dk | No comments |

01 March

勢いのある久保八段

昨日の2月28日,棋王戦五番勝負 第2局が行われ,久保八段が勝って佐藤棋王から連勝しました.
なんと57手,という短手数です.

序盤から激しい空中戦になり,on time では,途中までしか見られなかったのですが,後から結果を見て,思わずうなってしまいました.
40手くらいまでは,どちらがリードしているのか私には分からないような形勢ですが,「さばきのアーチスト」と呼ばれる久保八段の華麗なさばきが見られた一局と言えそうです.

ちなみに,今日は NHK杯将棋トーナメントで,久保八段と行方八段の勝負があり,途中まで行方八段が有利と思われましたが,ヒックリ返して久保八段の勝利!
NHK杯は,今日で準決勝の4名が決まり,羽生名人,森内九段,佐藤棋王と,今日勝った久保八段が残っていますが,今一番勢いがあるのは,久保八段でしょう.

プロ棋士は,4段以上は誰が誰に勝っても不思議ないほどに実力が接近していますが,連勝する勢いを維持出来る棋士は,ある程度限られています.
まだタイトルを持っていない久保八段ですが,近いうちにタイトルを獲得するかも知れません...


22:40:42 | dk | No comments |